最終的に選んだもの



 河村としえ(以下河村):
    いつから今のお仕事を?


 塩川いづみ(以下塩川):
    2006年に多摩美を卒業して、2007年から
    イラストレーターの仕事をフリーでやっています。


 河村:一番最初の仕事覚えてる?


 塩川:CDジャケットだったかな。


 河村:その時から変わったなぁって思うことある?


 塩川:うーん。いつも目の前の課題をひたすらやってきた
    っていう感じで意識してなかったけど
    でも、その時と並べたらやっぱり変わってるかも。
    この仕事だったらこのくらいは時間かかるな、とか
    できるできないも今ならわかる。
    大学卒業した後は営業みたいなことはしてなくて、
    依頼が来たらやっていたんだけど、最初のやりとり
    から手探りだったから
    わ、お仕事こういう風に来るんだ!どうしよう!
    って毎度なってた。


 河村:周りに相談できる人いた?


 塩川:デザイン事務所のお手伝いをしていたから
    イラストが納品されてきた後でどういう風に
    使われていくかは見たりしてた。
    ただ自分のことになると、今は普通にやってることでも
    当時は分からなくて、直接その相手に聞いてた。
    「できます。」って答えてから何のことか調べたり
    来たお仕事はなんでも受けてました。


 河村:へえ。数年前、まだスナックルイーズやってるときに
    多分いづみちゃんがご飯セットか何か食べてたんだけど、
    基本相席だったから、いづみちゃんに気づく女の子達もいたりして。
    うちの店じゃ落ち着かないんじゃないかな?って
    ちょっとそれがずっと気になってて、
    その夜、思い切って聞いたんだよね。
    「知らない人に写真撮られても平気?」って。
    そしたら私なんかは作品ありきの
    黒衣みたいなもんですから~って笑ってくれて。


 塩川:かっこいいですね(笑)。


 河村:本当にかっこよかったし、若い頃からいろんな経験して
    覚悟できてる人なんだって思った。
    今後もずっと絵は描いてく感じ?


 塩川:絵描くことが仕事になってすごいなあって、
    いまだに思っていて。


 河村:はー。そうかそうだよね。


 塩川:私にとっては絵を描くことは日常のことだったから。


 河村:小さい頃はみんな割と普通だと思う。
    私も小五くらいまでは絵描いてた。いづみちゃんは、
    その先もずっと普通のことだった?
    例えば中学生とか高校生になっても。


 塩川:普通というか、得意な方だった。 
    図工の時間に褒められるからますます絵が好きになったし、
    重宝される度、私ができることは絵描くことかなあって
    いうのは思ってた。
    ただそれを仕事にするかどうかっていうのは別の話で。
    世の中そんなに甘くないって思ってたし、
    好きなことだからこそ、
    人にジャッジされて嫌いになりたくなくて。
    そういう事を冷静に考えていたって言うよりは、
    進学校だったから周りはみんな勉強していたし、
    良い大学に行って世の中をもっと広く知るみたいなことが
    普通なのだと思って選択肢に入れてなかった。
    んーまあ流されてたんですけど。
    だけど結果的には、絵を描くことしか頑張れなくて。


 河村:頑張れてない時のいづみちゃん、
    全然頑張れてなさそう!


 塩川:やる気がないというか。


 河村:そこはすごく強い。
    いつも穏やかで気遣いの人だけど、
    やりたくないことは「できないです〜」って。


 塩川:ダメだこりゃ~って。


 河村:この子あかんわ~!って(笑)。




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