彼女が覗いているもの



 河村としえ(以下河村):
    どうしてFLOWERmagazine
    引き受けてくれたのか聞いていい?


 松原博子(以下松原):
    それは、としえちゃんって自分の世界と
    いつも戦ってきた感じがしててね。
    そんなとしえちゃんからのオファーは
    ぜひやりたいと思ったよ。


 河村:うぅ(涙)。当たり前だと思うけど、
    いつもの仕事と違ったところはある?
    まず予算が少ないというのは大前提で。


 松原:普段の仕事は予算だけじゃなく
    いろんな制限があって、その制限の中で
    こうやったら面白いよね、とか思いながら作るんだけど。
    今回は、服をちゃんと見せてくださいとか、
    そんなこと言う人もいないし、
    ある意味ページネーションもきっと自由だろうし。
    自由の前にひれ伏す、みたいな感覚だった。
    自由って難しい。


 河村:考えるのってめんどくさいよね。


 松原:ほんとそう!でも最近その面倒くさいって思うことから
    なるべく逃げたくないって思ったりしてて。
    自由にできるってその分すごく難しかったけど、
    でもいざ、撮影が始まったら目指す方向性が見えてきた。


 河村:うんうん。最初にVOICEの撮影して
    急にモデルがいいよ!ってなって、
    慌てて一週間くらいで準備したよね。


 松原:撮影当日になって娘が熱を出しちゃって。


 河村:あの日、私の中でスイッチが入ったのを覚えてる。
    Yちゃん熱出してて、幼稚園に預けられなくて
    まっちゃんが抱っこしないと泣いちゃうから
    おんぶしたままシャッター切り続けるまっちゃんの姿を
    見ててなんかもうやばかったです。


 松原:いつも必死やから(笑)。次があのバナナと卵のやつ。
    スタジオ借りての物撮りで。あの物撮りのページって
    きっと一番トシエちゃんの気になってる
    物、コトが並んでと思うけど、どうだった?


 河村:うーん、あれは難しかった。
    とにかくパンチのきいた植物を沢山用意してたし、
    その植物のパワーだけでもってけるって考えてたのに、
    全然上手くいかなくてね、すごく焦った。
    おろおろしてる場合じゃないのに全然できなくて。
    途中でなんか自分の中の恥ずかしいとか、
    評価を怖がってるところとか、とにかくそういう蓋を
    取ろうって決めたら見えたって感じだった。


 松原:カメラマンって、そういう人の心の中を
    覗いてる気分もあってそれが楽しいことでもある。
    としえちゃんのお花のアイディアにのっかる。
    覗き見、が狙いでした。


 河村:はー!なるほどね。




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