許し合う男女と変なお守り




 Mさんはよくスナックに顔出してくれてたおじさん。

 とは言え全然おじさんって見た目じゃないし

 おしゃれで面白くて女の子には人気があった。

 そのMさんが店にしめ飾りを買いに来てくれた。

 ここしばらく顔を見せなかった理由に

 「だってさ、ここは女子のための店だもん」と言ってた。

 Mさんは少し緊張してたかもしれない。


 スナックルイーズは女子にとって居心地良い空間に

 したいといつも思ってたのは本当。女子というよりも

 私のようなおばさん達のためにだったような。

 その空気がうっとおしいと思う男子は来なくていいと

 思うまでにはいーっぱい事件があって

 たどり着いた答えであって最初からじゃなかったけど

 いつの間にかそういう言い訳もしなくていいんじゃないかと

 思うようになって体も心もしんどくなってた。

 スナックは閉店し、あの頃のように頻繁に会うことは

 二度とないと分かっている。

 そういう寂しさがお互いにある人間関係はすごくいい。


 Mさんみたいにどこ行っても人気者な男子からしたら

 納得がいかないところが多々あったかもだけど、

 今思うといろんな出来事を笑えるし、同じように

 女子を守りたいみたいな使命感に燃えてた頃の私の態度も

 少しは許せたのかもしれない。


 帰る間際に私としーちゃんにそれぞれ黄色い布巾着に入った

 お守りみたいなものを一つずつくれた。

 巾着の中には、振るとコロコロと豆が転がるような音のする

 和紙でできた小さな円錐状っぽいものが入ってた。

 それを大晦日の12時に吉方に向かって

 立てると金運が良くなるのだけれど、底が水平じゃなく

 簡単には立たないようになっているらしい。

 Mさんは閉店時間が過ぎても両面テープを使って

 どうしたら吉方位に面して立てられるかを

 細かく説明してくれたけど、私もしーちゃんもちょっとだけ

 閉店時間が過ぎてることに気が散ってた気がする(笑)。


 確かにそう言われてみれば金運いいかもしれないMさん。

 仕事あんまりしてなさそうなのに、

 都内に家持ってるし、レコードだってたくさん買って

 今日だって素敵にSUNSEAを着てる。

 美味しいものだって私よりいっぱい知ってる。

 しめ飾り、うちのがいいって言って買いに来てくれたから、

 女だらけだと分かっていながら勇気出して来てくれたから、

 理由はそこそこあるから、

 彼の教えてくれた通りに大晦日の夜12時、

 今年良いとされる方にむかってそのお守りみたいなやつを立てた。

 両面テープは使わなかった。




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